薬学研究に競合する学部

 創薬研究は、薬学部生だけが狙う職業ではありません。かつて創薬研究は、農学部農芸化学科の出身者が主流でした。例えば、高脂血症治療薬でブロックバスターといわれた第一三共(旧三共株式会社)の「メバロチン」を創出したS氏は農芸化学のご出身。「日本の創薬研究は農芸化学の出身者が先導してきました」と語っておられました。そして今も生命科学・バイオ系の学部出身者が創薬研究をリードしています。
 また有機合成を研究テーマにもつ学部は、工学部や理工学部、理学部、農学部などにあり、それぞれの大学院研究室で創薬研究が行われています。製薬企業のインタビューを行っても、薬学部の独占分野と考えられている「製剤」の研究に理学部出身者にたびたびお会いします。国立大学や私立上位大学の出身者です。各大学のHPで研究室の研究内容を確認してみるといいでしょう。
【薬科学科と他学部が異なるところ】
 薬学は、化学(Chemistry)をバックボーンとしてきましたが、他学部と決定的に違うのは薬学出身者が病態や生体に関する基礎を身につけているところにあります。
 薬学部では「人の生命現象の研究」を行ったり、化合物を患者さんに用いる薬を前提にしています。薬学教育や創薬研究は、人の生命、生体における機能(機能形態)、病態生理学など人の生命・健康をベースとした学問・研究の上に成り立っているのです。
 薬を単なる物質として見る工学部や理学部、生命科学部と一線を画す学問分野です。

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